TX inc.

2017年1月23日、東京大学と慶應義塾大学の舘研究室からテレイグジスタンスで未来を創るベンチャー企業が生まれました。テレイグジスタンス(遠隔存在)の研究に基づいたロボティクス開発の企業、Telexistence株式会社(TX inc.)です。会長には、舘暲東京大学名誉教授が就任し、現在、富岡仁CEO  (最高経営責任者)と佐野元紀CTO(最高技術責任者)のもと、南澤孝太慶應義塾大学教授を技術顧問として事業を推し進めています。

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Telexistence: How This Tokyo Startup Is Building Real-Life Avatar Robots
 Forbes #CuttingEdge 2018年1月26日(金)

テレイグジスタンス(TELEXISTENCE/遠隔存在)とは、TX inc. の創業者の一人でTX会長でもある東京大学名誉教授 舘暲氏が1980年に世界で初めて提唱した、人間が、自分自身が現存する場所とは異なった場所に実質的に存在し、その場所で自在に行動するという人間の存在拡張の概念であり、また、それを可能とするための技術体系です。 

テレイグジスタンスとは

TX inc. のミッションはこの技術の産業化を実現し、個人、企業、社会の生産性や利便性を飛躍的に向上させ、より生き生きと豊かで、かつ持続可能な社会づくりに貢献することです。ロボッティクス、バーチャルリアリティ(VR)、通信ネットワークの技術を総合的に活用し、いわば「自分のアバター(化身、分身あるいは義体)」をつくり出します。これにより、人は新しい身体を手に入れられます。しかも、自分自身の身体を失うことはありません。その身体は、いままでの身体に比べ運動能力が勝っていたり、見えないものも観たり、足りない知識を補ってくれる身体です。しかも、離れていても良いのです。ネットワークで結ばれたアバターの中から自分で好きなアバターを選んで世界中どこにでも瞬間移動できます。病院に長期に入院している子供が家族や友達と一緒に外に遊びに行ったり、寝たきりのお婆さんがお孫さんの結婚式に参列したり、宇宙船に乗らずに月旅行をしたり宇宙から地球の平和を実感したりすることも夢ではありません。インターネットは、情報のユビキタス(遍在)化から始まり、現在は、ものをユビキタス化するIoTへ進化しています。そして、その先が、人の身体のユビキタス化です。身体のユビキタス化こそが、テレイグジスタンスの目指すものに他なりません。それ故、AI、VRそしてロボティクスや次世代通信を総合してイノベーションを起こす、次世代テクノロジーの大きなトピックとして注目され、輸送、物流、通信などさまざまな分野の大企業がテレイグジスタンスに投資するなど、本格的な社会実装に向けて動きはじめているのです。

このテレイグジスタンスを1980年に考案した舘 暲氏が、東京大学教授を退任し、KMDの教授に就いたのは2009年。40年にも及ぶ研究成果を最新のテレイグジスタンスロボット「テレサV」としてまとめ上げました。2015年からは、JST(科学技術振興機構)のACCELの「身体性メディア」プロジェクトでテレイグジスタンスの社会実装を目指し、再び東京大学にもどります。触原色に基づく触覚技術を確立しつつ、建設現場や工場のみならず日常生活や介護の現場での実証実験に取り組むなか、2016年になって、世間では第二次のVR・AR(人工現実感・拡張現実感)ブームが巻き起こりました。「時代が追いついてきた。次は間違いなくテレイグジスタンスが実用化される時代がくる」。そう確信した舘教授、南澤准教授とフェルナンド特任講師は起業を模索します。

テレイグジスタンスロボットTELESAR V。この技術がTX inc. に移転され製品化に向けた開発が進められている。

そんな中、追い風が吹きます。世界の偉大なリーダー50 人に2014 年に選出され、イノベーション界のカリスマと評されるピーター・ディアマンデス氏が1995 年に創立した非営利組織X プライズ(XPRIZE)財団が主催するコンペVisioneers Summit が、2016 年10 月に開催されました。このサミットの目的は、次のXPRIZE の対象テーマを九つの候補テーマの中から選ぶことにあり、学識経験者や企業のCEO、ベンチャーキャピタル(VC)の決定権者などからなる約300 人のMentor と呼ばれる審査員により、9 チームの提案テーマが2 日間かけて審査されたのです。

舘教授はXPRIZE 財団のAvatar チームから、「世界で最も進んでいるAvatarであるTELESAR V の実演をVisioneers Summit で行ってほしい」旨の要請を受け、2 日間にわたり実演をフェルナンド特任講師など研究室のメンバーと一緒に行いました。その結果、他のテーマを押しのけ、Avatar が、次期のXPRIZE のテーマとして選定され、世界中からの参加者によるAVATAR XPRIZE に向けての競争が2018年3月から開始されるに至ったのです。2022年に予定されている決勝大会を目指して、世界中からあまたのスタートアップが生まれ、テレイグジスタンスのビジネス基盤が整備されていくことになります。富岡 仁氏をCEOに迎え、いちはやく会社組織となったTX inc. は、この追い風の中で、その“元祖”でありまた“本家本元”として、日本で培われた長年の研究実績を武器に世界に躍進しグローバルな社会的インパクトを与える存在となるでしょう。

「歴史の転換点」、アバターが実現する未来へ
 Forbes Japan 2018年3月23日(金)

TX inc.では商用テレイグジスタンスロボットおよび操作コックピット、そして人間の作業や行動のデータを活用するためのクラウドインフラストラクチャーの開発を急速に進める中、工場の自動化、物流、小売、旅行、航空などの宇宙会社などの関心のある企業と話し合いを進めながら、身体障害者や高齢者用「瞬間移動」、ゲームやエンターテインメントや遠隔作業などをコンセプトとした事業なども含め、テレイグジスタンスに適した新しいビジネスモデルを考案しつつ、一刻も早い社会への実装に向けて注力しています。 

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